ミツバアケビ

ミツバアケビ
花序 福島県会津地方 2009年4月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : モクレン亜綱 Magnoliidae
: キンポウゲ目 Ranunculales
: アケビ科 Lardizabalaceae
: アケビ属 Akebia
: ミツバアケビ A. trifoliata
学名
Akebia trifoliata (Thunb.) Koidz. (1925)[1]
シノニム
和名
ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)

ミツバアケビ(三葉木通[3]・三葉通草、学名: Akebia trifoliata)はアケビ科アケビ属落葉性つる性木本。山野に生え、果実は食用になる。アケビとともに秋の味覚として親しまれてきたつる性の植物で、3枚の小葉があることからミツバアケビとよばれる[4]中国名は「三葉木通」[1]。地方の山菜名でキノメともよばれる。

分布と生育環境

日本中国に分布する[5]。日本では、北海道本州四国九州に分布し、山地に生育する[6]。北海道に自生するほど耐寒性も強い[4]。山野や山地の明るい緑林を好み、アケビよりいくらか山奥に生える[5]。アケビに比べて育成地域が広く、荒れ地や乾燥地でも旺盛に繁殖する[4]。果実がアケビよりも大きくなることから果樹としても栽培される[6]

形態・生態

落葉つる性の木本[6]アケビAkebia quinata)によく似ているが、葉で判別がつく[3]。つるの繁殖力が強く、が他の樹木にからんで這い上がり、地面を這う枝も出す[5]。つるの巻方向は、上から見て右巻き(S巻き)で巻き付き、茎は太いもので直径2センチメートル (cm) になる。樹皮は灰褐色から紅褐色をしており、丸い皮目がまばらにあり、不規則に亀裂が入り成木になると剥がれる[4][3]

互生し、掌状で小葉が3枚になる3出複葉である[5][6]。小葉は長さ4 - 6センチメートル (cm) 、幅1.5 - 4 cmのいびつな卵形から広卵形で[5][6]葉縁には波状の鋸歯ある[3]葉柄は2 - 14 cmと長く、小葉につく小葉柄は0.3 - 3 cmになる。ふつう落葉性であるが、暖地では冬でも葉が残ることもある[3]。葉の表面は濃緑色、裏面は淡緑色で、両面とも無毛[4]。小葉の先端はわずかに凹み、基部が円形にやや膨らむのが普通で、日当たりの良い環境で育成した葉は厚みがある[4]

花期は4 - 5月で[6]、若葉が出ると同時に花を咲かせる[7]雌雄同株[5]、雌雄異花の植物で、アケビよりも花の色は濃い紫色である[8]。新葉のわきから総状花序を出して下垂または下曲させ、花序の先のほうに十数個の小型の雄花をつけ、基部に大型の雌花を1 - 3個つける[6]。雄花は濃暗紫色で径4 - 5ミリメートル (mm) になり、反り返った花弁状の萼片は長さ2 mmで3枚あり、6本の雄しべが球状に集まる[8]。雌花は3 cm前後になる花柄をもち、濃暗紫色で径15 mmほどになり、花弁状の萼片は長さ7 - 10 mmで3枚あり、円柱形になる雌しべが3 - 6本つくことが多い。花に花弁はない。

果期は秋(9 - 10月ごろ)[6]果実液果で、厚い果皮に包まれ、長さ10 cmほどのずんぐりした繭形か、長楕円形になる[6][8]。果実はアケビに比べて先端側のほうの膨らみが大きく、全体に太い[8]。雌しべの1 - 3個が結実すること普通であるが、なかには全て結実する場合もある[8]。秋に熟すると、緑色から紫色または赤紫色に変化し、果皮が裂開して[9]中にゼリー状の果肉がある。果肉は白色半透明で、中には黒色の多数の種子を含む。果肉は甘くておいしく食用になる[6]

冬芽は短枝上か互生し、卵形で、赤褐色の芽鱗が多数ある[3]。葉痕は半円形から腎形をしており、維管束痕が7個ある[3]

  • 葉は3出複葉
    葉は3出複葉
  • 果実をつけたツル
    果実をつけたツル
  • 果実
    果実

利用

アケビと同様に、果肉も若芽も食用になり、つるは細工に用いられる[3]

東北地方では、アケビより灰汁(あく)が少ないミツバアケビの若芽をキノメ(木の芽)とよんで珍重する[7]。若芽の採取時期は暖地で3 - 4月、寒冷地で4 - 5月ごろが適期といわれる[7]。若芽も果皮も灰汁があり、独特のほろ苦さと歯ごたえがある[7]。若芽は茹でて米飯に混ぜて「木の芽飯」にしたり、お浸し和え物、汁の実、炒め物などにする[7]。果実は中の果肉を生食したり、果皮に挽肉の味噌炒めを詰めて、油で焼いて食べられる[7]

つるは弾力があり丈夫でしなやかであることから、かごなどの民芸品になる[5][6]。籠編みの材として最高品といわれ、多くの生活用具に利用される[4]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Akebia trifoliata (Thunb.) Koidz. ミツバアケビ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2021年7月19日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Akebia trifoliata (Thunb.) Koidz. var. litoralis Konta et Katsuy. ミツバアケビ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月21日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 227
  4. ^ a b c d e f g 谷川栄子 2015, p. 18.
  5. ^ a b c d e f g 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 241.
  6. ^ a b c d e f g h i j k 西田尚道監修 学習研究社編 2009, p. 11.
  7. ^ a b c d e f 金田初代 2010, p. 66.
  8. ^ a b c d e 谷川栄子 2015, p. 19.
  9. ^ Jiang et al. 2023, doi:10.3390/ijms242316732.

参考文献

  • 金田初代、金田洋一郎(写真)「アケビ(木通、通草)」『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、66 - 67頁。ISBN 978-4-569-79145-6。 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、227頁。ISBN 978-4-416-61438-9。 
  • 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』NHK出版、2015年6月20日、18-19頁。ISBN 978-4-14-040271-9。 
  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、10頁。ISBN 978-4-05-403844-8。 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、241頁。ISBN 4-522-21557-6。 

洋書

  • Jiang, Yongli; Du, Yanlin; Chen, Chongyang; Wang, Danfeng; Zhong, Yu; Deng, Yun (2023-11-24). “Integrative Metabolomic and Transcriptomic Landscape during Akebia trifoliata Fruit Ripening and Cracking”. International Journal of Molecular Sciences 24 (23): 16732. doi:10.3390/ijms242316732. ISSN 1422-0067. PMID 38069056. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38069056/.  仮題「Akebia trifoliata の果実の熟成と裂開の機序に関するメタボロミクスならびにトランスクリプトーム解析」

関連資料

本文の典拠ではないもの。

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、ミツバアケビに関連するメディアがあります。
  • 熊本大学 薬用植物のデータベースを公開
  • 日光植物園 東京大学の付属施設
  • プランツ・フォー・ア・フューチャー(英語版) 同名の植物データベースを主催するイギリスの非営利団体。本種の分布する気候帯や世界の国と地域、園芸や薬用への応用を記載。

外部リンク

  • ミツバアケビ 身近な生き物大図鑑(アーカイブ版)会津若松市役所HP「市内の生育確認区域:湊地区、大戸地区、門田地区」(2007年9月時点)
  • 薬草データベース > 日本薬局方収載の薬用植物 > ミツバアケビ 熊本大学附属薬用植物園
  • 植物和名検索 > ミ > ミツバアケビ 東京大学附属日光植物園(小石川植物園の分園)
  • “Akebia trifoliata Akebia, Threeleaf Akebia”. PFAF Plant Database. Plants For A Future. 2024年4月13日閲覧。(英語) 園芸への応用、海外の分布。